小児の病気・[あ]行>アナフィラキシー

アナフィラキシー

アナフィラキシー

【はじめに】
 最近、アナフィラキシーという言葉をテレビや新聞で見聞きする機会が増えてきました。しかし、いざ「アナフィラキシーって何?」と質問されたときに上手に説明するのは以外と難しいのではないでしょうか?
 アナフィラキシーは食物、薬物、ハチ毒などの原因物質による誘発される(即時型)アレルギー反応でその症状が短時間のうちに全身性に現れるものをいいます。アレルギー反応でじんましんが有名だと思いますが、「じんましんが出たけどすぐに治りました」といったものはアナフィラキシーとは呼びません。アナフィラキシーの多くは皮膚症状に加えて、喘鳴などの呼吸器症状や血圧低下を伴います。アナフィラキシーは死に至ることもある怖い病態なのです。

【アナフィラキシーは何が誘因になるの?】
・ 食物:卵、牛乳、小麦、ソバの他、エビ、カニなどの甲殻類、ピーナッツなどのナッツ類、そしてキウイ、バナナなどの南国系の果物が有名です。
・ ハチ毒
・ 薬物(抗生剤など)

※一度、アナフィラキシーを起こしたことのある物質はその後もアナフィラキシーを起こす可能性が高いため注意が必要です。

【アナフィラキシーの症状】
皮膚症状が最も多い症状でわかりやすいと思います。およそ9割の人にみられる症状でかゆみを伴うじんましんが典型的ですが、全身の皮膚が赤くなるだけの人もいます。粘膜症状としてくちびるが腫れる、まぶたが腫れる、眼が充血するなどの症状も重要で、口の中のイガイガ感や違和感などもよくみる症状です。
呼吸器症状も頻度が高く4〜6割の方にみられます。喘息のようにゼーゼーする症状は周囲の人達も把握しやすいですが、喉頭浮腫(のどの腫れ)が命に関わる重要な病態で、かつ初期症状をとらえづらい病態のため、のどの違和感、飲み込みづらさなどの症状に注意する必要があります。
低血圧は3〜4割にみられます。突然のめまいや失神などを引き起こし、呼吸器症状と並んで命に関わる病態です。
嘔気、嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状も2〜3割にみられます。

※ アナフィラキシーの主な死因は血圧低下(循環不全)呼吸障害であり、医療者はこの点に注意し治療にあたります。

【アナフィラキシーの症状進行のスピード】
 過去にイギリスで亡くなった164人の方たちの経過をまとめたところ、心肺停止までの時間はハチ毒などの虫刺されで約15分、食物で約30分と非常に短時間で心肺停止に至っていることがわかります。

【アナフィラキシーの治療】
 病院では症状に応じて様々な治療を行いますが、治療の基本となり唯一、治療効果の証拠があるのがアドレナリンの筋肉注射です。アドレナリンには血管収縮作用、強心作用、気管支拡張作用、メディエーター遊離抑制作用があります。早期のアドレナリン筋肉注射が治療の基本になりますが、症状進行のスピードが早い場合には病院にたどり着く前に心肺停止に至る場合があります。このため、早期のアドレナリン投与を可能にするために最近では『エピペン』と呼ばれる医療者以外の方たちが常備するアドレナリンの注射キットが処方可能になっています。(当院でも処方可能なので気軽にお尋ね下さい。)
 この他、血圧維持のための点滴、呼吸器症状改善のための酸素投与や吸入、皮膚症状改善のための抗ヒスタミン薬の投与などを行います。

【アナフィラキシーは入院が必要?】
 アナフィラキシーは治療により症状の改善が得られた場合でも二相性反応と呼ばれる、いわゆる『ぶり返し』症状がみられる場合があります。アナフィラキシーを発症した方の約6%の人たちにこの『ぶり返し』症状がみられます。初期反応から『ぶり返し』までの時間が1〜28時間と幅が広いことが知られています。そして『ぶり返し』で厄介なのは初期反応よりも軽度な場合、同等な場合だけではなく、より重篤な症状が出現する場合がある点です。このため医療者側としては、万が一の『ぶり返し』に備えて入院をおすすめします。
posted by 院長 2013年05月10日 | 小児の病気・[あ]行>アナフィラキシー

小児の病気・[さ]行>ぜんそく

気管支ぜんそく

 最近はマイコプラズマ感染症やインフルエンザ感染症とともに気管支喘息発作で受診するお子さんも増えていますので今回は気管支喘息をとりあげます。

 気管支喘息のお話をするにあたっては「喘息はどんな病気なのか?」、「どうやって診断するのか?」、「どうやって治療するのか?」、「家庭で行うセルフケア」などと順序だてて詳しくお話する必要がありますがブログの中ではとても説明しきれるものではありません。

 外来で「そんなに咳もしていないのに、どうしてお薬を長く続けなければいけないのですか?」、「一体いつまで続けなければいけないのですか?」という質問を多く頂きます。そこで今回は、その理由を中心にお話ししたいと思います。慢性炎症(=持続的な火事)がキーワードになります。

気管支喘息はどうして長く治療を行う必要があるのですか?
 気管支喘息というとゼーゼー・咳というイメージがあると思います。しかしそれは喘息“発作”の症状であって喘息の本態は“気管がずーっと炎症を起しているのだ”ということを理解することが重要です。炎症は体の中で起こる“火事”に例えられます。つまり喘息の患者さんの肺の中の気管を顕微鏡でのぞいてみて見ると、発作が起こっていなくても慢性炎症という持続的な火事が起こっているのです。図はクリックすると拡大されます。見づらくてすみません。

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 この火事をほったらかしにしていると、ちょっとした刺激で発作が起こりやすくなるだけでなく気管の壁はどんどん厚くなります。そして最終的には厚くなった壁が元に戻らなくなってしまいます。壁が厚くなってしまうと同じ程度の発作でも、それまで以上に苦しくなってしまいます。そうならないためにも慢性炎症という持続的な火事を消す必要があるのです。

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持続的な火事が続いている証
 喘息の患者さんは運動によって、あるいは冷たい空気を吸ったり、大笑いしたり、湯気を吸ったりなど....ちょっとした刺激に敏感に反応してゼーゼーしたり咳き込むことがあります。このことを気道の過敏性亢進といいますが、これは一見普通に見える状態でも気管が持続的に火事(炎症)が起こっているために生じるのです。

慢性炎症を鎮める薬
 持続的な火事=慢性炎症を鎮める薬の代表は吸入ステロイド(フルタイド・キュバール・パルミコート・アドエア等)と抗ロイコトリエン拮抗薬(キプレス・オノンなど)です。どの薬によって炎症を抑えるかは患者さんの重症度によって様々です。重症度は発作の頻度や行っている治療によって定期的に判断します。

ずーっと続ける必要があるの?
 普通の火事と違い喘息の火事はとても頑固なので、しばらくお薬を続けなければなりません。定期的に重症度を判断しながら薬を減らしたり、あるいは増やしたりする必要があります。安定した状態が数ヶ月から2年間確認出来れば治療の中止を検討します

子供の喘息は治るのですか?
 3歳までにゼーゼーした人では、60%が6歳の時点でゼーゼーしなくなったという統計があります。また6歳-7歳で喘息と診断されているお子さんでは50%-60%は大人になるまでにゼーゼーしなくなるという研究結果があります(いずれも日本ではなく海外での研究です)。


posted by 院長 2011年04月28日 | 小児の病気・[さ]行>ぜんそく

小児の病気・[ま]行>マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ肺炎

早いもので11月も半ばとなりました。

H22.10月の中旬頃からマイコプラズマ肺炎の患者さんを見かけるようになりました。

下のグラフは10月以降にマイコプラズマ肺炎の患者さんが旭川市内で増えてきている様子を示しているグラフです(クリックすると拡大されます)。

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そこで今回はマイコプラズマ肺炎についてお話したいと思います。


<マイコプラズマ肺炎について>
 発熱・咽頭痛(のどの痛み)・咳・頭痛・倦怠感(体のだるさ)とあたかも風邪のような症状で始まります。長引く熱や咳のため気付かれるケースが多くあります。好発年齢は5-10歳台で潜伏期間は平均2-3週間とされています。

 マイコプラズマ肺炎は肺炎マイコプラズマ(以下、マイコプラズマ)というバイキンによる感染症です。このバイキンの大きな特徴は普通のバイキンは殻(カラ)を持っているのに対し、マイコプラズマは殻(カラ)を持っていないことです。

<殻(カラ)がない......>
 広く用いられている通常の抗生剤は殻(カラ)を壊すことでバイキンをやっつけますが、その抗生剤では殻を持たないマイコプラズマをやっつけられません。通常の抗生剤で治療しているにもかかわらず症状がなかなか改善しないのはそのためです。

 マイコプラズマはバイキンが分裂出来ないようにする力を持った抗生剤で攻撃しなければなりません。バイキンが分裂出来ないとやがて寿命が尽きて死んでしまうことを利用した治療方法です。寿命が尽きるまで時間がかかるので適切な抗生剤を用いても熱が下がるまで3日前後を要します。咳はマイコプラズマが体の中からいなくなっても2-4週間続きます。

・普通のバイキン:殻(カラ)がある
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殻を壊す抗生剤(通常の抗生剤)が効く

・マイコプラズマ:殻(カラ)がない
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・殻を壊す抗生剤(通常の抗生剤)が効かない

       ↓

 分裂を抑える抗生剤を用いる


<診断方法> 正確な診断には2回の血液検査が必要です!

1. 肺炎と気付いた時(1回目)、2. 気付いた時から7-14日後(2回目)で血液検査を行います。血液中のマイコプラズマに対する免疫(抗体というマイコプラズマをやっつける体の中のミサイル)を確認します。

1回目の検査で免疫反応が低い状態であることを確認し、2回目の検査で免疫反応が高まっていることが確認でれば診断が確定します。

実際に、最近、マイコプラズマ肺炎と診断した患者さんの血液検査を示します。尚、マイコプラズマの感染を起こしたことのない人の検査値は40倍未満です。

○○ちゃん
1回目の検査でマイコプラズマに対する抗体(=ミサイル):80倍
              ↓
2回目の検査でマイコプラズマに対する抗体(=ミサイル):320倍

○○くん
1回目の検査でマイコプラズマに対する抗体(=ミサイル):160倍
              ↓
2回目の検査でマイコプラズマに対する抗体(=ミサイル):2560倍


<迅速診断について>
上記の方法が時間がかかるということで、すぐに、しかも一回で結果が出るという方法が登場しました(採血が必要ですが......)。

子供への注射も一回で済むので大変魅力的なのですが、残念ながらこの方法では一回の検査で陽性と出る確率は30%と低いだけでなく、その検査で陽性と判定されても本当はマイコプラズマではない確率がおよそ20%と信頼性に問題があります。結果の解釈には注意が必要です。

時々“1年間に何回もマイコプラズマに罹ったことがあります”...と言われる患者さんがいますが、おそらく迅速診断の結果の解釈の誤りだと思われます。


参考文献)
尾崎隆男、西村直子. マイコプラズマ・ニューモニエ肺炎の診断と治療に関する最近の治験. 感染と抗菌薬 vol.11, no.1, 2008.

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